建築資材が高騰、住宅価格への影響は?
住宅の建築に用いる資材の価格高騰が続いています。
新型コロナウイルスの影響が建築資材にも深刻な影を落とし、世界的に木材価格が高騰していることに加え、鉄筋や鉄骨といった鋼材も不足しています。
さらに、ロシアのウクライナ侵攻が加わり、建築資材をめぐる環境は激変しています。
建築資材価格の高騰は、不動産物件の購入を検討されている方にとっては、気になるところだと思います。
そこで今回は、こうした社会環境の急激な変化が、不動産、特に住宅価格に及ぼす影響について、解説します。
コロナ禍により建築資材価格が高騰。「ウッドショック」と「アイアンショック」が同時襲来
2021年3月ごろから、世界的な木材の供給不足により、木材価格が急騰しています。このような木材価格の高騰は、「ウッドショック」と呼ばれています。
北米では、コロナ禍での低金利政策を背景に、テレワークが浸透し、市民が住宅を郊外に新しく購入したり、リフォームしたりする流れが進み、住宅建築需要が急増しました。
もともと、山火事や虫害の発生などにより、原料となる木が不足していました。そこに、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて製材所が休業を余儀なくされるなか、世界では建築用木材需要が増加した結果、木材価格の高騰が引き起こされています。そして、ウッドショックによる影響は、木材需要の6割以上を輸入に頼るわが国にも及んでいます。
ウッドショックと同時に、鉄鋼関連資材の不足も続いており、鋼材価格も高騰しています。これは、「アイアンショック」と呼ばれています。
特に中国で政府の景気刺激策によってインフラ投資が加速したことで、鋼材の需要が増加しました。これに伴い、鋼材の原材料である鉄鉱石や鉄スクラップの需要・供給も行き詰まったことが引き金となって、鋼材価格が著しく高くなったのです。
ロシアのウクライナ侵攻が、さらに追い打ち
さらに、ロシアによるウクライナ侵攻が、建築資材価格の高騰に追い打ちをかけています。
日本政府は、2022年4月から、ロシアへの制裁に踏み切りました。これを受け、ロシア産の石炭、木材の輸入が禁止され、セメント、合板などの建築資材が高騰しています。
この制裁で最大のポイントは、石炭です。石炭は、セメントの原料となる石灰石を加熱する際に、燃料として使われます。わが国のセメント業界では、ロシア産の石炭に全体の5割近くを頼っています。
また、ロシア産の木材は、強度が高く耐震性が優れているとして、日本国内の木造住宅の建築現場でも重宝されていました。しかし、2022年3月に、国際的な森林認証機関によって「紛争木材」に認定され、使用できなくなりました。
建築資材価格は高止まりが続く
建築資材の値上がりは、木材や合板、鋼材、セメントなど、広範囲に及んでいます。特に、輸入に依存している原材料の価格高騰が、建築資材価格全体を押し上げています。
コロナ禍からの経済再起動による需要回復や、資源国の政治不安、金融緩和による投機マネーの流入といった複数の要因が絡み合い、建築資材のさまざまな原材料・資源の高値を招いています。
今後、新型コロナウイルスが終息し、ウクライナ情勢が落ち着いたとしても、建築資材価格は高止まりのままにあると考えられます。
日本銀行のデータを参照し、木材の価格推移を見ると、輸入価格は、集成材や製材では緩やかに低下する傾向にありますが、合板や丸太では上昇を継続しています。一方、国内価格は、合板を除き、高止まり傾向にあります。
また、一般財団法人 建設物価調査会のデータを参照すると、代表的な鋼材の一つであるH形鋼の価格も、上昇基調で推移しています。
建築資材高騰が住宅価格にも影響
木材や合板、鋼材、セメントに加え、ステンレス(シンクなどの材料)などに使用されるニッケル、給湯器や照明器具などに組み込まれる半導体部品(素子、センサーなど)に使用されるパラジウム、サッシなどに使用されるアルミニウムなど、住宅建築や住宅設備に欠かせない多くの資材が高騰したことにより、住宅価格にも影響が出ています。例えば、物件の用地取得費や人件費の上昇など他の要因も関与していますが、首都圏の新築マンションの平均価格が2021年度に過去最高値を記録しました。
不動産業界筋では、2022年以降も、マンションをはじめとする住宅価格は下がる見込みはほとんどないと予測しています。今後、住宅価格は1割程度高くなる可能性がある、とみる専門家もいます。
建築資材の価格高騰、人件費の上昇、地価の上昇…。こうしたコストアップ分は、不動産価格に転嫁せざるを得ません。
今後、不動産価格の上昇は避けられず、不動産購入のハードルがますます高くなるでしょう。